不妊治療
丸山記念総合病院
体外受精(IVF)とは
排卵近くまで発育した卵子を体外に取り出し、精子と接触させ、受精、分割した胚を子宮内に戻す不妊治療(高度生殖補助医療:ART)のことです。
1978年にイギリスではじめて体外受精児が誕生して以来、急速に普及し、わが国でも年間3万人を超える赤ちゃんが体外受精により誕生しています(2011年)。
これまでの報告では、自然妊娠と比べて赤ちゃんに異常が起きる確率に差はないとされています。
体外受精の対象
1.卵管が閉鎖している、もしくは機能していない場合。
2.精子の数や運動率が不十分であり、人工授精では妊娠しない場合。
3.その他の不妊症で、他の治療(排卵誘発、人工授精など)で妊娠に至らない場合。
なぜ「ART」が必要か
採卵周期の月経3日目より、毎日HMG注射が始まります。注射はお近くの病院でも構いません。
(依頼書を持って行っていただきます。)数日おきに外来にて卵胞の数と大きさをチェックします。
セトロタイドは、HMGを射ちながら、卵胞の大きさと子宮内膜の厚さを観察し、最適な時期にその投与開始を決定します
(だいたいHMG投与5~6日目よりhCGの注射まで続けます)。
※ セトロタイドの代わりに、ナファレリール(GnRHアゴニスト)を1日2回鼻に噴霧することで予期せぬ排卵を防止する場合もあります。
噴霧開始日については 採卵する前の周期の高温期7日目から (long法)
採卵する周期の月経開始日から (short法)
があります。
詳しくは卵胞刺激スケジュールを御覧下さい。
卵胞の数と大きさをチェックし、発育が十分であると判断した時点で、HCGを注射します。
HCGを打つ時刻は午後11時です。特にご希望がない場合は原則として当院でお願いします。
他病院をご希望の場合は、あらかじめその病院とご相談下さい。2日後の採卵にむけて体調を整えて下さい。
HCG投与2日後の朝に採卵を行います。
静脈麻酔下(全身麻酔)に、経膣超音波で卵胞を観察しながら膣の壁から針を刺して卵胞液を吸引し、その中の卵を採取します。
採卵数が少ないことがわかっている場合には、局所麻酔にて採卵を行うこともあります。
看護師が二人付き、不測の事態にも十分に対応できる状態で施術します。(採卵数が少ない場合は局所麻酔での施術もありえます。)
当日は旦那さまにもお越しいただき、採精室にて精子をとっていただきます。当日はお昼過ぎに帰宅できます。
採卵翌日からプロゲステロン膣座薬を入れていただきます。
旦那さまに採取していただいた精液は、精液の状態に合わせて最適な処理を行い、元気で形の良い精子が集められます。 通常の体外受精ではこの精子をそのまま卵子へとふりかけ、精子の能力で受精を行います。 ただし、初回は精子の授精能力が乏しい場合を想定し、Splitと呼ばれる方法で数個の卵子に対して顕微授精を行う場合があります。
採卵の3日後もしくは5日後に、胚移植を行います。経腹超音波にて子宮内を観察しながら、細いチューブの先を膣から子宮内に挿入し、胚を注入します。
胚移植後、膣座薬を妊娠判定日まで連日入れていただきます。
胚移植を行った後、残りの胚は追加培養を行います。受精後5~7日目まで培養し、良好胚盤胞が得ら
れれば凍結保存を行います。凍結胚が保存できれば次周期以降に採卵を行うこと無く融解胚移植を行
えます。
胚移植1週間後に、経膣超音波で卵巣の状態をチェックし、血液検査でホルモンの値を調べます。
胚移植2週間後、外来にて妊娠判定を行います。妊娠の場合は、児心拍が確認できるまで膣座薬を継続します。
○ 体外受精で、赤ちゃんに異常が起こる確率は、自然妊娠と比べても大きな差は無いとされています。 ただし、40歳以上の方が妊娠した場合、加齢による妊娠・胎児におけるリスクは増加する可能性があります。
○ 採卵は、基本的に全身麻酔(卵が数個の場合は局所麻酔)下で行います。麻酔による副作用が出る可能性があります。 アレルギーや高血圧などのある方は、必ず事前にお申し出下さい。
○ 卵巣刺激の副作用として、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を起こすことがあります。
OHSSを発祥すると、血管から水分が漏れ、それがもとで血栓が出来てしまい、脳梗塞などの重篤な副作用を起こすことがあります。
早期の治療が必要ですので、以下の症状の現れた場合は、早急にご来院下さい。
*お腹が強くはる *お腹が痛い *ウエストが大きくなった *おしっこが減った *息が苦しい
*採卵後に体重が2kg以上増えた
以上の場合は、入院して点滴治療などが必要になる場合があります。
○ 移植日にOHSSが予測される場合には、胚移植は見合わせすべての胚を凍結保存することがあります。 この場合、後日OHSS症状が落ち着いた周期に融解移植を行うことになります。
体外受精の代替治療は、タイミング指導やAIHなどの一般不妊治療、さらに排卵誘発(クロミッドやHMGなどを用いる)がありますが、 いずれも体外受精より妊娠する可能性は低くなります。
当院は日本産科婦人科学会の「生殖補助医療の実施登録施設」となっています。 このため、毎年の治療データの学会への報告が義務付けられています。データは一昨年のものが報告され、学会で集計されています。
学会への治療データの報告や、学会・研究会での発表などに個人が特定できるような形でのデータの提示はいたしません。 別紙の「個人情報保護に関する当病院の基本方針」をご覧下さい。
体外受精について疑問や不安を感じたら、いつでも医師にご相談下さい。 治療の中断、撤回、ステップアップなどもいつでもお申し出下さい。